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優れた近代美術コレクションで知られるクレラー=ミュラー美術館は、オランダの首都アムステルダムから南西へ約60km、国内最大のデ・ホーヘ・フェルウェ国立公園の中にある。公園の緑に囲まれた瀟洒な本館はベルギー人建築家アンリ・ヴァン・ド・ヴェルドの設計で、1938年にオープン。その後、彫刻庭園や新館が付け加えられた。美術館の収蔵作品は、オランダの実業家クレラー=ミュラー夫妻のコレクションが主体となっている。妻ヘレネ・ミュラーの父が経営する会社を引き継いだアントン・クレラーは、ミュラー社を世界有数の海運貿易会社に成長させ、その財力を背景に、ヘレネは1907年頃から、近代美術を中心に作品を買い集めるようになった。フランスやオランダの19世紀写実主義絵画やモネ、ピサロなどの印象派、スーラ、シニャックといった新印象主義、さらに20世紀美術や彫刻にも関心を示したが、コレクションの中心をなすのは272点に及ぶゴッホの作品である。ヘレネはとくにゴッホの《4本のひまわりのある静物》を愛好していたという。 |